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講演会のお知らせ (9/30: 原 秀明 氏 京都大学大学院理学研究科)
演題:「アルカリ原子とアルカリ土類様原子の量子縮退混合系の生成」
講師: 原 秀明 氏 京都大学大学院理学研究科
日時:9月30日 14:30-16:00
場所:コラボレーション棟4階 403室(共同研究室)
概要:
異種原子から構成される超低温原子混合系は、不純物系の量子シミュレーションやエフィモフ状態、混合系から生成する極性分子間の異方的長距離を利用した量子計算や量子シミュレーションへの可能性があり、興味深い。混合系の先行研究はアルカリ原子混合系を中心に行われているが、本研究では、アルカリ原子のリチウム(Li)とアルカリ土類様原子のイッテルビウム(Yb)の超低温原子混合系に着目して研究を行った。この原子混合系は、電子スピン自由度をもつ極性分子YbLiを用いた量子スピン系の物理のシミュレーション[1]や、固体中の不純物問題の量子シミュレーション[2]等の様々な研究の可能性がある。特に、波長1064nmの光格子中で、Yb原子のサイト間ホッピングレートはLi原子より非常に低くなるため、Yb原子は固体中の局在する不純物、Li原子は遍歴する電子としてみなすことができる。
我々はこのような背景のもと、光トラップ中で蒸発冷却を行い、174Yb-6Liボース・フェルミ混合系と、173Yb-6Liフェルミ・フェルミ混合系において同時量子縮退を実現した[3]。アルカリ原子とアルカリ土類様原子の量子縮退混合系は、本研究が初めてである。特に、Liは0.1TF程度にまで冷却することに成功し、非常に深くフェルミ縮退した気体を実現することができた。
また、不純物系の量子シミュレーションに向けてYb-Li混合系の3次元光格子を実現した。まず、ボース・アインシュタイン凝縮した174Ybを浅い光格子にロードし、トラップから解放したときの多重物質波干渉パターンを観測することで、光格子が形成されたことを確認した。さらに、6Liと混合した時の174Ybの干渉パターンと、174Yb単体を光格子にロードした時の干渉パターンの違いを調べた。また、174Ybの超狭線幅遷移を用いて、光格子中174Yb-6Li混合系の高分解能分光を行い、分光スペクトルへの6Liの存在の影響を調べた。Yb-Li混合系の高分解能分光は、アンダーソン直交定理の研究に応用することができる[4]。実験では、174Yb-6Li間の相互作用が小さく、さらに重力ポテンシャルによって174Yb-6Li原子の空間的な重なりが減ったために、干渉パターンと分光結果に、6Liの明瞭な影響は確認できなかった。しかしながら、今回実現したYb-Li混合系の光格子は、不純物問題の量子シミュレーション等への応用につながる重要な第一歩である。
Reference
[1]A. Micheli et al. ,NaturePhys. 2, 341 (2006) [2]D. Semmler et al. , Phys. Rev. B 81, 115111 (2010) [3]H. Hara et al. , Phys. Rev. Lett. 106, 205304 (2011) [4]M. Knap et al. , Phys. Rev. X 2, 041020 (2012)
問い合わせ先:量子宇宙研究センター 植竹(内線7909)