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新物質Qカーボンの作製を再現 エネルギー材料としての展開に期待

2020年07月30日

◆発表のポイント

  • 世界に先駆けて、新しい炭素材料Qカーボンの再現に成功しました。
  • Qカーボンの作製には、原料炭素の熱的性質と照射レーザーの強さを適切に調整することが重要であることを示しました。
  • Qカーボンを用いた省エネやエネルギーに関する研究が加速されると期待されます。

 岡山大学異分野基礎科学研究所の村岡祐治准教授らの研究グループは、世界に先駆けて、作製が非常に難しい新しい炭素材料Qカーボンの作製を再現することに成功しました。また、Qカーボンの作製方法を確立するための指針を示しました。
 研究成果は、2020年6月25日、科学雑誌「Carbon」電子版に掲載されました。
 Qカーボンは2015年に報告された新しい炭素同素体です。室温強磁性、わずかなエネルギーでの発光、ダイヤモンドを凌ぐ硬度、ホウ素ドープ(添加)による超伝導などの特性を示します。これらの特性は省エネやエネルギー問題を解決するうえで有用であるために、世界中でQカーボンを再現するための研究が繰り広げられています。しかし、Qカーボンはレーザーを使った極短時間のプロセスにより生成されるためその作製が難しく、これまで発見者グループ以外にQカーボンの作製例はありませんでした。今回、岡山大学の村岡祐治准教授らの研究グループはナノ秒レーザーを使用した作製プロセスにおいて、冷却度に着目して実験を行いました。その結果、溶融炭素の急冷度を厳密に制御することによりQカーボンを作製することに成功しました。また、Qカーボンの作製には、原料炭素の熱的性質と照射レーザーの強さを適切に調整することが重要であることを明らかにしました。
 本研究成果は、Qカーボンを作製するための指針を示すものです。この成果により今後、Qカーボンの作製方法を確立する研究やQカーボンを用いた省エネやエネルギーに関する研究が本格化すると期待されます。




図1. Qカーボンの表面像。フィラメント状の明るい部分がQカーボン。




図2. Qカーボンの室温強磁性的振舞い。


 

◆研究者からのひとこと

Qカーボンの作製に成功したときには研究室の学生たちと大喜びしました。失敗続きの後に巡ってきた、うれしい瞬間でした。
村岡准教授

■論文情報論 文 名:Formation of Q-carbon by adjusting sp3 content in diamond-like carbon films and laser energy density of pulsed laser annealing
邦題名「ダイヤモンドライクカーボンのsp3量とパルスレーザーアニールのエネルギー密度の調整によるQ-カーボンの形成」
掲 載 紙:Carbon著  者:Hiroki Yoshinaka, Seiko Inubushi, Takanori Wakita, Takayoshi Yokoya, Yuji MuraokaD O I:10.1016/j.carbon.2020.06.025発表論文はこちらからご確認できます。
U R L:https://doi.org/10.1016/j.carbon.2020.06.025


<詳しい研究内容について>
新物質Qカーボンの作製を再現 エネルギー材料としての展開に期待


<お問い合わせ>
岡山大学異分野基礎科学研究所
准教授 村岡 祐治
(電話番号)086-251-7898
(FAX)086-251-7903