題目 | 第一原理計算による物性予測
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講師 | 小口多美夫 氏 (広島大学大学院先端物質科学研究科 教授) |
日時 | 6 月 17 日(火)16:00 - 17:30 |
場所 | コラボレーションセンター 3階 コラボレーション室 (岡山大学津島キャンパス内 ) |
要旨 | 今日ではほとんどの科学者・技術者の机の上に10年前のスーパーコンピュータに匹敵す
る能力を有するコンピュータが例外なくある。したがって、コンピュータを研究開発に活 かすことはもはやごく少数のエキスパートの仕事ではなく、現場レベルのコミュニティー
における日常茶飯事なこととなってきた。このような状況下にあって、第一原理計算は物 質・材料研究での重要なツールのひとつと位置付けられはじめている。第一原理計算とは
、“第一原理(ここでは量子力学の基本原理)から出発して物理現象を非経験的に記述す る手法”である。ここでのキーは、対象とする系(構成元素、構造、有する物性等)に方法論が本質的に依存しない汎用性と、実験等による経験的知見が計算の入力パラメータとしては含まれてはいない非経験性である。計算ではもちろん第一原理の式を厳密に解いて
はいないのであるが、計算に含まれる近似や仮定を客観的に評価することができれば物理 現象を第一原理から理解し予測することが可能となる。量子力学は1930年頃にその完成をみたが、広範な固体物質系への具体的適用及びそれによる物性の定量的な議論はHohenberg
とKohnによる密度汎関数法(1964年)の登場以降であろう。密度汎関数法は多電子系の基 底状態に関する厳密な(量子力学の記述と等価な)理論である。その後、1990年代になって量子化学の分野における密度汎関数計算の応用が爆発的に拡大したことは、1998年のKohnのノーベル化学賞の受賞に象徴されている。
本セミナーでは、第一原理計算による種々の物性の理解及び予測を試みた研究例につい て、そのいくつかを紹介する。 |
世話人 | 理学部物理学科 澤田昭勝 (TEL: 086-251-7810) |