要旨 |
重力マイクロレンズ現象とは、ある天体の前を別の天体が横切った場合に、
遠い方の天体(背景天体)の光が途中の天体(レンズ天体)の重力場によ
って集光され、一時的に増光して観測される現象である。
1986年にパチンスキーにより、銀河ハロー中の暗黒物質の候補である
MACHO(Massive Compact Halo Object)探索法として提唱された。
LMC方向にはこれまで12例のMACHO候補が見つかっているが、
必要なハロー暗黒物質の20%程度にしかならない。
昨今、重力マイクロレンズ現象が系外惑星探索に有効であることがわかり
注目を集めている。主星と惑星からなる連星重力マイクロレンズは干渉を
起こし複雑な増光曲線を描く。この曲線をフィットすることで主星ー惑星
の質量比、公転距離等が分かる。統計的にではあるが今のところ地球程度
の軽い系外惑星を検出する唯一の方法である。昨年1月には地球の5.5倍と
いうこれまでで最軽量の系外惑星が検出され話題になった。
重力マイクロレンズが起こる確率は非常に小さく、およそ1千万個の星を
毎晩観測して1個見つかる程度である。したがってその検出には、できる
だけ星の密集したバルジ、LMC、SMC等を広視野望遠鏡で連続測光
する必要がある。我々名古屋大学太陽地球環境研究所のMOAグループは
一昨年よりニュージーランドに2.2平方度の視野を持つ専用1.8m望遠鏡を
設置し連続観測を行っている。同グループのトピックを中心に重力マイクロ
レンズの初歩的な説明をしたのち,暗黒物質と系外惑星探索の近況を紹介する。
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