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講演会のお知らせ  (11/29:小林夏野 准教授(理学部・自然科学研究科))

演題:Low carrier number superconductors and their exotic properties
講師:小林夏野 准教授(理学部・自然科学研究科)
日時:11月29日(水) 16:30〜
場所:コラボレーション室(コラボレーション棟 3F)
概要:
 ナローギャップ半導体にキャリアドープすると、いくつかの物質において少数キャリア数を持つ超伝導体になることが知られている。通常の超伝導体に比べて少ないキャリア数での超伝導実現は、強い相互作用などの期待から研究が行われてきた[1]。近年、よく知られたナローギャップ半導体の多くが、強いスピン軌道相互作用を持つ元素を含むことからトポロジカルに保護された表面状態を持つことが角度分解光電子分光や電気伝導測定などの実験からも示され、多くの研究が行われている[2]。これらのナローギャップ半導体にキャリアドープして実現する超伝導の多くはトポロジカル超伝導体候補として期待され、超伝導物質に関しても表面状態や異方的な超伝導性などの超伝導状態に関する詳細な物性研究も数多く行われている[3]。
 SnCh(Ch=S, Se, Te)はNaCl構造をとると、その結晶対称性からトポロジカル結晶絶縁体であることが知られている[4]。このうちのSnSeのSnサイトを半分Agで置換する化学ドープを行いNaCl構造を持つ超伝導体Ag1-xSn1+xSe2を合成した。超伝導転移温度(Tc)の変化から超伝導はSn5s軌道とTe 5pの混成軌道によるものであることを示した。このSn 5s軌道の寄与はSnの価数が2+, 4+の不連続な値をとることに対応していることを考えると超伝導に対する価数スキップの強い影響を示唆する[5]。Snの価数と超伝導の関係を化学置換や物性測定から議論する。

[1] (a) R. A. Hein and J. W. Gibson, Phys. Rev. Lett. 12, 320 (1964). (b) J. K. Hulm et al., Prog. Low Temp. Phys. 6, 205 (1970).
[2] X. -L. Qi and S. -C. Zhang, Rev. Mod. Phys. 83, 1057 (2011).
[3] Y. Ando, J. Phys. Soc. Jpn. 82, 102001 (2013).
[4] Y. Sun et al., Phys. Rev. B 88, 235122 (2013).
[5] T. Wakita,et al., Phys. Chem. Chem. Phys.,19, 26672 (2017).


連絡先:物理学科 横谷尚睦(内線7897)