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令和 5年度(2023年度)第6回 物理教室談話会

題目 電子の永久電気双極子能率測定による物質反物質対称性の破れの探索
講師 増田孝彦 氏
(異分野基礎研・量子宇宙研究コア准教授)
日時 2024年1月15日(月)15:30-
場所 理学部本館 第23講義室
概要  素粒子にはその反粒子が存在する。宇宙最初期には粒子と反粒子は同数発生したと考えられるが、現在の宇宙には反物質はほとんどなく、物質を構成する粒子のみが安定に存在している。粒子と反粒子の違い、ひいてはこの宇宙が物質 のみからなる理由は、定性的には粒子と反粒子の対称性であるCP対称性の破れで説明されるが、定量的には理論値と観測値の間に10桁もの乖離が存在しており、宇宙の大きな謎の一つとなっている。このCP対称性の破れの謎は、現在の素粒子標準理論に含まれるCP対称性の破れの度合いが小さすぎるためというの が広く受け入れられている仮説である。そのため、理論に含まれない未知のCP対称性の破れを探す研究が数多く行われている。
 そのような実験の中でも現在もっとも高感度な探索を実現しているのが電子の 永久電気双極子能率(電子EDM)である。本セミナーでは、米国グループと岡 山大学グループのコラボレーションで進めている電子EDM探索実験「ACME実験」 について紹介する。ACME実験では極性分子ThOのビームを用い、その内部電子 のスピン歳差周波数を高精度に測定することでEDMの値を得る。ACME実験は 2018年に世界最高精度を達成しており[1]、現在はさらに感度を30倍に上げる アップグレードを行っている。現在までで主要なサブシステムの開発はほぼ完 了し、目下全サブシステムの組み合わせを進めている。本セミナーでは現在の 状況と展望について紹介する。

[1] ACME Collaboration, Nature 562, 355-360 (2018).

世話人 世話人  吉村浩司(内線 8499)