はじめに
コンピュータを駆使して,以下のような課題に取り組んでいます。
例えば, 銅酸化物のCu 1s 共鳴XES, Cu 2p 共鳴XES, O 1s共鳴XES, UPS, Cu 2p XPS, Cu 2p XAS,・・・・の計算をしています。これらの計算を通して Cu3d-O2p電子系について調べるということが目的です。
XPS, XAS, RIXS(XES)などをそれぞれ異なった光学過程であるため,
得ることができる情報にもそれぞれ得意分野があります。
例えば, Cu 2p XPSはCu3d軌道と配位イオンの価電子軌道との間の
共有結合の様子を確実に知ることができ,Cu2pXASでは3d正孔の対称性
についての情報が得られる,といった具合です。
RIXSはXPS,XASと比べて新しい実験手法であり,技術的発展が著しい実験手法です。 実験データの解析方法が十分に確立していない状況も多く,理論計算が果たす役割はかなり大きい分野と言えます。 特に,遷移金属化合物や希土類化合物などの強相関電子系では,その多体問題の本質的な難しさゆえに理論の果たすべき役割は大きくなっています。
アクチナイド5f電子系が超伝導, 磁性などの面で主役となっている系と
考えられています。
5f電子系の高エネルギー・スペクトルの実験データは既に世のなかにたくさん
存在していますが, 理論解析はあまり系統的に行われていません。3d,
4f系に比較すると,5f電子系は局在性,遍歴性がかなり拮抗している系のように見え,
理論的にも取り扱いにくい系です。良い近似計算手法を考える必要がある系です。
MCDとは,右回り,左回り偏光のX線の吸収スペクトルを測定して, その差を取ったものです。内殻電子がX線を吸収し遷移した先の軌道状態の 分極の様子をMCDにより探ることができることが知られています。 希土類イオンのL2,3吸収端とは2p内殻から5d外殻軌道への 吸収のことですので,そのMCDを調べることにより5d電子系の軌道分極の 様子がわかります。
希土類化合物の場合, 希土類4f電子系が大きな局在モーメントを 持っていて,5d電子系がもつモーメントは小さいのですが,5d電子系は 希土類イオン間,あるいは希土類イオンとそれ以外のイオン(例えば 遷移金属イオン)などとの間を遍歴して局在モーメント間の結合を担う という重要な役割をしていると考えられています。本研究では, そのような5d電子系について調べることを目的としています。
XES = X-ray Emission Spectroscopy
RIXS = Resonat Inelastic X-ray Scattering
XAS = X-ray Absorption Spectroscopy
XPS = X-ray Photoelectron Spectroscopy
UPS = Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy
MCD = Magnetic Circular Dichroism
IPES = Inverse Photoelectron Spectrscopy
(=BIS, Bremsstrahlung Isochromat Spectroscopy)