ハニカム格子の超伝導
SrPtAs
ハニカム構造を持つニクタイドでは初めての超伝導体を発見しました。
原子が蜂の巣状に並んだハニカム格子は、ファン・ホーヴェ特異点 (van Hove singularity)と呼ばれる、
電子の分散(エネルギーと波数の関係)の鞍点に起因した電子状態密度の発散を示します。
このため、特異点に上手くフェルミ準位を持ってくると、超伝導転移温度が著しく高くなると考えられています。
SrPtAsの超伝導転移温度は2.4Kと高くありませんが、電子数をチューニングすれば、より高い温度での超伝導が期待できます。
SrPtAsは、局所的に空間反転対称性が破れた超伝導体としても注目されはじめています。
ハニカム格子自体は空間反転対称性を有します。しかし、PtとAsがハニカム格子を交互に占有することで空間反転対称性が破れます。
このPtAs面が積層したSrPtAsの結晶全体では空間反転対称性が復活するのですが、
隣接するPtAs面間の相互作用がPtのスピン軌道相互作用に較べて十分小さいので、それぞれのPtAs面は独立とみなせて、結局、
空間反転対称性の破れの効果 ー 例えばスピン一重項とスピン三重項が混ざった超伝導 ー が現れると考えられています。
今後の実験的検証が楽しみです。
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Superconductivity in the Honeycomb-Lattice Pnictide SrPtAs
Y. Nishikubo, K. Kudo, M. Nohara,
J. Phys. Soc. Jpn. 80, 055002 (2011).
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Spin-singlet superconductivity with a full gap in locally non-centrosymmetric SrPtAs
K. Matano, K. Arima, S. Maeda, Y. Nishikubo, K. Kudo, M. Nohara, Guo-qing Zheng,
Phys. Rev. B 89, 140504(R), (2014).