若手A(平成22-24年度)
予算名: | 科学研究費補助金 |
種目: | 若手A |
期間: | 平成22-24年度 |
タイトル: | 「レニウムと超伝導検出器を用いたニュートリノ絶対質量の測定」 |
概要
超伝導検出器とレニウムを用いたニュートリノ絶対質量の測定を行うことを目的とする。
レニウム187は全元素中最も小さいQ値(2.6keV)でベータ崩壊を起こす。
ベータ崩壊におけるベータ線と反跳原子核のエネルギーを超伝導検出器で精度良く測定することが
できれば、原理的にニュートリノの絶対質量を1eV以下の精度で測定が可能である。
超伝導検出器として申請時にはAl-STJ (Superconducting Tunnel Junction)を用いる予定であった。
そこで、まずはAl-STJを作製する技術を確立することから始めた。
Al薄膜形成条件、エッチング条件、酸化条件などを最適化することにより、Al-STJの作製に成功した。
そのSTJ実機を作製しAm-241からのアルファ線でフォノン検出を試みたところ、
予想よりも検出効率が悪いことがわかった。
おそらく、クーパー対が解離されて生じた準粒子の拡散長が予想よりも短いのではないかと
考えた。
そこで研究方針を転換して、AlとNbを組み合わせたMKID (Microwave Kinetic Inductance Detectors)の開発に移ることにした。
MKID実機を作製し測定したところ、フォノンを高い効率で検出することに成功した。
アルファ線の信号のパルス幅を測定したころ、約数マイクロ秒となり、
これはMKIDの共振器自身が持つ帯域幅の逆数とほぼ一致した。
つまり共振回路の時定数を測っていることになり、予想された準粒子寿命(~50マイクロ秒)よりもだいぶ短い
ことがわかった。また、STJで検出効率が悪かった理由の裏付けとなった。
この違いは、まだ理解されておらず、目下調査中である。
MKIDにレニウムをはりつけるためにPLD (Pulsed Laser Deposition)法を用いて、
レニウムの薄膜を形成した。超伝導転移を確認し、結晶が正常にできることがわかった。
また本研究では、業者と共同開発しヘリウム3冷凍機を整備した。
現在、MKIDの読み出し回路をFPGAで開発している。
論文・雑誌リスト
K.Hattori, M.Hazumi, H.Ishino, M.Kawai, A.Kibayashi, N.Kimura, S.Mima, T.Noguchi, T.Okamura, N.Sato,
O.Tajima, T.Tomaru, H.Watanabe and M.Yoshida, “Development of superconducting Detectors for Measurements of Cosmic Microwave Background, Physics Procedia 37 (2012) 1406 – 1412. |
H. Ishino, A. Kibayashi, K. Hattori, M. Hazumi, Y. Kibe, S. Mima, N. Sato, M. Yoshida and H. Watanabe, “Development of Microwave Kinetic Inductance Detectors for a Detection of Phonos", Journal of Low Temperature Physics, publised online. |
学会発表リスト
日本物理学会春季大会 | 新潟大学2011年3月28日 (震災のため中止) | 超伝導フォノン検出器の開発 | 石野宏和 |
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Technology and Instrumentation in Particle Physics 2011 | Chicago, USA Jun. 3rd, 2011 |
Development of Aluminum Superconducting Tunnel Junction (STJ) detectors for millimeter wave and particle detections | H. Ishino |
日本物理学会 秋季大会 |
弘前大学 2011年9月17日 |
超伝導フォノン検出器の開発2 | 石野宏和 |
日本物理学会 春季大会 |
関西学院大学 2012年3月25日 |
超伝導検出器Microwave Kinetic Inductance Detectorsの基礎特性の研究 | 山田要介 |
日本物理学会 春季大会 |
関西学院大学 2012年3月25日 |
超伝導トンネル接合素子(STJ)作製条件の最適化 | 湯浅泰気 |
日本物理学会 秋季大会 |
京都産業大学 2012年9月11日 |
フォノン検出器の開発3 | 石野宏和 |
日本物理学会 春季大会 |
広島大学 2013年3月26日 |
超伝導フォノン検出器の開発4 | 石野宏和 |